「命の限りに生きてやる」、エネルギッシュな生き様から探る、安藤忠雄の建築に注ぎ込まれた生命力の源。「安藤忠雄展 ―挑戦―」が国立新美術館にて、2017年9月27日より開催

安藤忠雄氏 ポートレート  撮影:荒木経惟


安藤忠雄氏の名前を初めて耳にしたのは、いつ頃だったろうか?
かつて、芦屋に住む知人の家を訪れた際に、六甲山麓の斜面に建った階段状のコンクリート建築の巨大な集合住宅が目に飛び込んできた。
芦屋川沿いから見た景観に浮かび上がるような存在感のその集合住宅は、初めて見た人の誰もが、あれはなんだろうか、と思うはずである。

「安藤忠雄が建築したマンション」であると聞いた。すでにその時は安藤忠雄を有名な建築家として認識していたのであるが、まさか人が日常的に暮らす場所であるマンションが、有名建築家の名前を冠しているとは、さすが芦屋、などと思ったものだ。


住吉の長屋,1976年,大阪府大阪市 (撮影:新建築社 写真部)
住吉の長屋 模型(右)

安藤忠雄にとって、人間の「住まう」という最も根源的な営みを受け止める住宅こそが、建築の“原点”であるという。2017年9月27日より開催される展覧会の一つ目のセクションでは、「原点/住まい」と題して、初期の代表作から近年の圧倒的スケールの海外作品まで100を超える住宅作品のハイライトが一挙に公開される。


2017年4月12日、国立新美術館で、今秋から始まる安藤忠雄氏の大規模な個展「安藤忠雄展 ―挑戦―」の開催に先立ち、記者会見が開催された。

登壇した安藤忠雄氏の口から飛び出したのは、「自由と勇気」「絶望から始まった」「命の限り生きてやる」「建築は生命力があるものだ」「日本の政府には、文化の力を愛を持ってサポートしてほしい」・・・ そんなエネルギッシュで含蓄のある言葉の数々。

自らのこれまでの人生を語りながら、展覧会のタイトル「挑戦」に込められた想いや、安藤忠雄氏が建築のテーマとする、周辺環境と一体化させ、その場所の個性を際立たせるような建築としての「直島プロジェクト」、建築という枠組みを超えた社会活動への取り組みなどが紹介された。


直島 ベネッセハウス,1992/1995年,香川県直島町 (撮影:松岡満男)
直島の一連のプロジェクト(香川県直島町) 模型,香川県直島町

1941年に大阪で生まれた安藤忠雄氏は、元プロボクサー、独学で建築を学んだ異色の経歴で知られる。既成概念を打ち破るような斬新な建築作品を次々と世に送り出すと、活躍の舞台を世界に広げ、アジア・ヨーロッパ・アメリカなど各国で意欲的な作品を実現させた。その一方で、建築という枠組みを超えた、環境再生や震災復興といった社会活動にも果敢に撮り組み、今後においても更なる活動を計画している。

プンタ・デラ・ドガーナ,2009年,ヴェニス/イタリア
撮影:© Palazzo Grassi SpA. Foto: ORCH, orsenigo_chemollo
プンタ・デラ・ドガーナ 模型(右)

9月27日からの展覧会では、そんな希代の建築家がいかに生きて、いかに創り、今またどこに向かおうとしているのか―その壮大な挑戦の軌跡と未来への展望が、「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものをつくる」「育てる」という6つのセクションに分けて紹介される。

模型やスケッチ、ドローイングなど、総計200点余りの設計資料が展示される空間デザインは、安藤忠雄自身の手によるものである。建築家が歩んできた道程を追体験することのできる空間で、建築という文化の豊かさと、その無限の可能性に触れたい。

また、展覧会を通じて、安藤忠雄氏の思想や人生観が我々の心に語りかけてくることにも静かに耳を傾けたい。




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